ねえ

ヘッドフォンから静かに
あの夏の
あの響き

耳で胸で追うのさ
もう聞こえない
囁き

ねえ、
そう話しだす時はいつも
終わりの予感がした

「分かってるからいいんだ
その先は
まだ今は」

涙のように夕立
零れて落ちた
横顔

ねえ
海が見えるカーブで僕は
時計の針を止めた

傷はまだ やわらかい
夜はまだ 切ない

ねえ
唇を離れても歌は
どこかで流れ続ける

僕を満たして静かに
あの夏の
あの響き

もうこんなにも遠いと
そう思えるのに

いまも耳に残る  
降り止まない
雨音と

ねえ、
そう言って僕を覗き込んだ
その瞳が忘れられない