もう
嘘でいいから
言い掛けて
微笑みが
消えるのが嫌で
ハンドルを
南へ切る
また
夏を見ようか
何処かでなら
花火は
今夜まだ上がる
横顔に
月の明かり
恋の
始まりを思う
追えば
逃げて
少し
振り返って
突然の
雨の
高架下で
抱き合って
もう
嘘でいいから
この道を
果てまで
走っていこうか
カーラジオは
Strawberry Switchblade
細い
肩を震わせる
黒い
夜の
向こう
上がり続ける
音だけの
花火
この痛みは
もう違う
「また
夏を見ようか」
シートを浅く
倒して
下手な寝たふりの
横顔に
月の明かり
濡れた
睫毛を照らして