逆光で見えない

鍵盤に指を落とし
もう上手く動かない手で
何を掻き集めて
何を解き放とう

忘れていたはずの
約束をまた思い出して
また忘れるために
また思い出して

遠い日の モデラート
小さな窓辺の僕らが
逆光で見えない

いつか行こうと笑って
くるくると回した地球儀
天空の遺跡
イグアスの夜の虹

閉ざした胸の奥で
カシャカシャと切り替わる場面
思い出じゃないのに
思い出みたいに

遠ざかる アンダンテ
いちばんすきだった笑顔が
逆光で見えない

鍵盤に指を落として
古い旋律を奏でる

まだ思い出じゃないのに
もう思い出みたいに

遠い日の モデラート
小さな窓辺の僕らが
逆光で見えない

遠ざかる リタルダンド
いちばんすきだった笑顔が
逆光で見えない