愛しているよ

取っておいたんだ
この言葉は
10年目のきみに
絶対に捧げようって

きっと言ったって
ちらりと見て
お好きにどうぞ
横顔だけで応える

だけどさ
そういうところが好きだから
まったく
しょうがないよね

ブランケットを取り合う
雨の午後に
決まって僕らは
夢の話をする

クリッターカントリーの庭に
おとぎの国の家
僕の好みはひとつも
反映されてないけど

まあいいさ
きみは何だかご機嫌だし
まったく
今日もやっぱり

ありったけ
きみは可愛い

だからさ
この日々の繰り返しが
どれほど
宝物かって、

長いあくびをして
肩にもたれる

まあいいや
おやすみのキスをして
まったく
今日も明日も

昨日もそれまでも
明後日もその先も

出逢った日からずっと
ずっと

愛しているよ

知ってるよ、って微笑う
きみを

それよりももっと
もっと

愛しているよ

no Merry Xmas

断ればよかったのに
ツリーの飾り付けなんて
目一杯楽しそうに
調子を合わせたりして

その内にほら
聞きたくもない話になる
ね、見る目無いよね、って
カレにじゃなくてキミにね

2色の電飾を
苦労して巻き付けて
綿の雪を
もうふんだんに載せて

天辺には
ベツレヘムの星
キラキラと
西の空で光ったって

神様なんていない
涙声で言うから
クリスマスについては
何も言わないでおくよ

no Merry Xmas
どうせ次に会った時には
文句のフリをした惚気話さ

no Merry Xmas
そう笑うのがやっとなのに
ありがとうなんて見つめないで

外は真冬の風
ドアを閉めた途端
イルミネーションの街が
一斉に溶け出す

no Merry Xmas
どうせ次に会った時には
文句のフリをした惚気話さ

no Merry Xmas
そうならない事を願っているのに
ありがとうなんて見つめないで

何処かからジングルベル
プレゼントを抱えた人混み

no Merry Xmas
窓際で光るツリーと
照らされた横顔を思いながら

no Merry Xmas
お礼のワインで今夜
僕は何に乾杯しようか

アトモスフィア

ずいぶん長く
会えなかったけれど
話せなかったけれど

元気でいた?
それともまだ夜毎
赤い目を擦って

もう
笑えないかもって

もう
きっと笑えないかもって

悪い夢に
足を絡められて
きみをきみが縛って

今夜
星が降ればいい

祈りが
きみに届いたらいい

煌めく粒を
胸いっぱい吸い込んだ
白い吹き出しには

ほんとは
思いがぎっしり
張り裂けそうなほど

もう
笑えないかも って

今夜は
雨の匂い

立ち止まって
ポケットで手を繋いで
白い吹き出しには

二度と言えない
あんな言葉とか
こんな言葉

街灯の
消えた角で

今夜
星が降ればいい

辺り一面に
お祝いの日のケーキみたいに

今夜
星が降ればいい

祈りが
きみに届いたらいい

辺り一面に
お祝いの日の花火みたいに

violet fizz

2000円で朝まで飲み放題の
クズみたいな酒の処理機構の

夜には目を覚まして
喚き合う バーカウンター
5、10、15、
中ジャンをハイスピードで

負けて呷って横目で盗み見る
手を叩いて笑う掃き溜めの鶴

グラスには violet fizz
スミレ色の 偽の愛で
rain、rain、外は
ぐっしょりの秋霖の街

酔い足りないのか 泣き足りないのか
タクシーをつかまえて 腕を引っ張って

濡れた髪のまま シートに凭れて
呟いた行き先を いまも憶えてる

口づけた
意味は たぶん無くて

ただ雨が
光って 流れていた

グラスには violet fizz
スミレ色の 偽の愛で
June、July、August
戻れる角はとうに過ぎて

10月生まれは 美人が多い、と
夕方のワイドショーに 少し得意げに

鏡越しのウィンク ベッドに倒れて
出掛けて行く背中を ずっと眺めてた

指切りに
罪は いつも無くて

口づけた
意味は いまも無くて

見下ろす街
名前を そっと呼んで

また夜が
光って 流れていく

月の明かり

もう
嘘でいいから

言い掛けて
微笑みが
消えるのが嫌で

ハンドルを
南へ切る

また
夏を見ようか

何処かでなら
花火は
今夜まだ上がる

横顔に
月の明かり

恋の
始まりを思う

追えば
逃げて
少し
振り返って

突然の
雨の
高架下で
抱き合って

もう
嘘でいいから

この道を
果てまで
走っていこうか

カーラジオは
Strawberry Switchblade

細い
肩を震わせる

黒い
夜の
向こう
上がり続ける

音だけの
花火
この痛みは
もう違う

「また
夏を見ようか」

シートを浅く
倒して
下手な寝たふりの

横顔に
月の明かり

濡れた
睫毛を照らして