菊水山で、愛を叫ぶ

夏の空いっぱいに
すきだって叫んだ
目を閉じて
風に耳を澄ませた

電波塔と全身を
収めようとするから
両方遠くなるのは
仕方がないんだって

言っても聞かない
じゃあもういいって
カメラを取り上げて
台座に腰を下ろした

夏の青いっぱいに
心は散乱する
目を閉じれば
あの日の湧き立つ雲

もう誰も乗り降りしない
忘れられた駅
イノシシの親子だけが
たまに待っているんだって

真に受けないよ
そんないつもの嘘
真に受けたりしないよ
その悪戯な瞳

最後に
菊水山で愛を叫ぼうって

真に受けたりしないよ
涙目で笑って

夏の空いっぱいに
すきだって叫んだ
これっきりの
思い出だってキスして

夏の青いっぱいに
心は散乱する
目を閉じて
聞き取れなかった囁き

目を閉じて
風に耳を澄ませた

dead end

やっぱりって
ダッシュボードに置いた
イニシャルを
刻んだ銀の指環

ごめんねって
どしゃ降りのあの道
目一杯
踏み込んだアクセル

危ないから ワイパーをまわしてって
きみは言うけど

どのみち僕には この先なんて
何も見えやしないんだよ

泣き顔で
精一杯微笑んで
無理をして
やさしく僕を抱いて

呟きは
雨音で聞こえない
振りをして
きみは僕を抱いて

このまま 遠い何処かへならって
きみは言うけど

そこへなら 僕はひとりでいい
ひとりきりで行けるんだよ

行き止まりの午後
ただ
恋をした午後

どしゃ降りの
あの道
踏み込んだアクセル

危ないから ワイパーをまわしてって
きみは言ったけど

どのみち僕には この先なんて
何も見えやしないんだよ

どのみち僕には この先なんて
何もありはしないんだよ

遠い冬の海沿いの駅

電車をもう
2本も見送って

プラットホームの端
降ったり止んだりの雪
紺色のピーコート
悴んだ指先
俯いたままの横顔

短く揃えた
襟足に北風

マフラーをしていたらな、って
繰り返し夢にみる
遠い冬の
無声映画のなか
動いているロープウェイ

見下ろした海より
はしゃぐ笑い声と

ねえねえ、って指した
ガラスに当たった爪と
その抑揚と
春の花のような
シャンプーの香りと

触れそうになるたび
揺れに逆らって

何度も逸らした肩
回転展望台の下で
雨になるかなって
眺めてた空
ずっとすきだったんだ、って

電車をもう
2本も見送って

プラットホームの端
降ったり止んだりの雪
紺色のピーコート
悴んだ指先
俯いたままの横顔

まだその情景を覚えているのか、と

繰り返し夢にみる
遠い冬の
海沿いの駅
もう恋はしないと

電車をまた
2本見送って

思い出の準備

あと何日僕たちは
笑ったり 涙ぐんだり
幸せで いられるだろう

ただ毎日恋をして
できるだけ 強い言葉で
きみのこと 繋ぎ止めるけれど

会えば会うほど不安で
きみはどんどん綺麗になる
僕はひとりで苛立つ
きみはだんだん賢しくなる

もうこの手は届かない
悲しいくらい遠いきみ

あと何日僕たちは
笑ったり 涙ぐんだり
変わらずに いられるだろう

離れ離れじゃ苦しい
誰も代わりになれはしない
僕はひとりで煮詰まる
誰も救いになりはしない

もう心は届かない
悲しいくらい遠いきみ

もうこの手は届かない
あたたかさだけ残されて
きみは思い出の準備

会えば会うほど不安で
きみはどんどん綺麗になる
僕はひとりで苛立つ
きみはだんだん賢しくなる

僕はひとりで煮詰まる
誰も救いにならない

もうこの手は届かない
もう心は届かない
あたたかさだけ残されて
きみは思い出の準備

点火

ここからは
ボーリング場の
でかいピンが見えるから

盆踊りの
太鼓の音も
切れ切れに聞こえるね

あっちの
打ち上げ花火を見に行こうか

まあきっと
ここからも見えるだろうけど

そういえば
UFOのドラマ
今日が最終回だったっけ

口数に
反比例な
受け止め続ける空気

でもまあ
この花火は
やってしまおうか

意外に
派手なヤツよりも
キレイかもよ

意外に
こんな方が
キレイかもよ

いま

火を点けるから
息を止めて