月の明かり

もう
嘘でいいから

言い掛けて
微笑みが
消えるのが嫌で

ハンドルを
南へ切る

また
夏を見ようか

何処かでなら
花火は
今夜まだ上がる

横顔に
月の明かり

恋の
始まりを思う

追えば
逃げて
少し
振り返って

突然の
雨の
高架下で
抱き合って

もう
嘘でいいから

この道を
果てまで
走っていこうか

カーラジオは
Strawberry Switchblade

細い
肩を震わせる

黒い
夜の
向こう
上がり続ける

音だけの
花火
この痛みは
もう違う

「また
夏を見ようか」

シートを浅く
倒して
下手な寝たふりの

横顔に
月の明かり

濡れた
睫毛を照らして

次は出逢わない

すべてを
きっと憶えておいて
次は
決して出逢わない

428号線の短い
トンネルを抜けたら
後は5回曲がるだけだって

何十ものカーブを無視した
雑な道案内で
辿り着いた坂の上には星が光ってた

またね って
振り向きもせず

すべてを
きっと憶えておいて
次は
決して出逢わない

散歩して喧嘩して
昼寝して絶交して
あのいつもの駐車場の隅

セルモーターを回させてって
車のカギをねだる
僕の背中の夕焼けを映した瞳が

問いかけた
答えを待たずに

またね って
小さく滲んだ

きっと
次は出逢わない
もし出逢っても
次は通り過ぎる

その口癖を
微笑みを
きっと憶えておいて

次は出逢わない
路地裏のネオン
次は通り過ぎる
港の夜の赤いタワー

きっと
憶えておいて
次は
決して出逢わない

ずっと
憶えておいて
二度と
逢うことのない世界で

きっと
憶えておいて

次は
決して出逢わない

NUDE MAN

その部屋には不似合いな
黒くてゴツいラジカセから

鳴るのは
決まって
NUDE MAN

たかだか
600日弱
早く生まれたってだけで

分かんないかな
だってさ、コービー
冷蔵庫を漁りながら

ビールは嫌いだったっけ って
不味いのはね って

何もかもいいじゃん
どうかな
あきらめの

ダンスホールに
口づけのランデブー
触れるほどに病める My Mind

忘れちゃったな
だってさ、Rocket Machine
これが何時の誰の忘れ物で

それをその時どのくらい
どんな風に聞いてたんだよ

Can't you hear me?
細いタバコに
火を点けて

Ain't she sweet?
はぐらかされても
悪かないじゃん

そうは言っても
やっぱさ、Somewhere In The Darkness
何時から誰とどう暮らして

そいつをその時どれくらい
どんな風に好きだったんだよ

もう忘れちゃったな
だってさ、ジャメイカ
そっと愛して ねっとと 抱いて

再生ボタンを強く押し込んで
心変わりのしないうちに

酔った夜だけの長いキスを
心変わりのしないうちに

結ばれない恋

抱きしめて 誰かに
この悲しさを 恋の重さを
微笑んで ひとこと
もういいからと 言ってほしかった

きみを愛してる とても愛してる
分かるんだ これは
結ばれない恋

だけど悪あがき
してもいいだろう?
きみを抱きしめて
夢みても いいだろう?

きみを愛してる とても愛してる
祈っても これは
結ばれない恋

抱きしめて このまま
守れはしない 約束ばかり
指切りで 時間を
出来るなら 止めてみたかった

抱きしめて このまま
この淋しさを 恋の深さを
微笑んで きみから
もういいからと 言ってほしかった

だって これは
結ばれない恋

最後のまるい月

ほらね マボロシと踊るよ
一途な夢も消えるよ
期待もせずに ただ何度でも
深夜のテレフォン きみを誘うよ

さあね 泣いたりもしたよ
悲しい夜もあったよ
記憶なんかは あてにならない
それより今日は 五月晴れだよ

何でもいいから 海が見たいな
言い訳なしで きみに触れたいな

もしさ 例えばだけどさ
近い将来、突然
ココロの中に これっぽっちも
きみがいないとか あるとしてさ

横顔に 陽を受けて なんて? って
ハンドルを握る指の
華奢なリングを光らせる

須磨の海 舞子の波 塩屋のカーブ
2、3度首を振って
何でもないよって 笑って

ほらね マボロシと踊るよ
一途な夢も消えるよ
期待もせずに ただ何度でも
きみに囁くよ 縺れる舌で

きみの マボロシと踊るよ
冷たい背中を追うよ
懲りないままで ここまで来たよ
分かっているよ 分かっていたよ

千年を夢みて 明日に震えた
ぽっかり浮かぶ 最後のまるい月

さあね 泣いたりもしたよ
悲しい夜もあったよ
離れるくせに 忘れるくせに
そんなに強く 抱きしめるんだね

そんなに強く 抱きしめるんだね
それより今夜は 月が綺麗だよ

ねえ
月が綺麗だよ

ずっと
月が綺麗だよ

ずっと
月が綺麗だよ