ほんの数センチ

気温がまた上がって
再生ボタンが押される

擦り切れて
擦り切れて
雨降り映画のような

あんまり青い空
だから錯覚した
奇蹟はこの手の
ほんの数センチ先にあるって

梅雨の晴れ間だって
天気予報が言ってた

目の奥で
目の奥で
小さな日傘が揺れる

あんまり青い空
だから観念した
世界の終りは
こんな風かもしれないって

液晶の空白のなか
カーソルの点滅を

追うように
追うように
言葉を吐き出して

あとから
あとから
零れてくる涙に

訳を捜すけど
意味を捜すけど
見つからないんだ

眩しいその笑顔
だから確信した
奇蹟はこの手の
ほんの数センチ先にあるって

眩しいその笑顔
だから観念した
すべての物語は
ハッピーエンドかもしれないって

だからあと数センチ
この手を伸ばす

すべての物語は
ハッピーエンドかもしれない