スマイル・フォー・ミー

これ以上 先なんかないって
分かっていたけど
僕が手をぎゅっと握るたびに きみは
はにかんだように微笑ったから

つるつるに凍った道を
見たこともないくらいはしゃいで
きみと走った 真夜中のオリエンタル
ペン型のエレベーター目指して

白い息を まるで汽罐車みたいに
勢いよく吐いて
螺旋の階段を駆け上がる 誰か
あの日の僕に言ってきかせて

そのドアをくぐってはいけないと
凍えた身体を温めてはいけないと

抱きしめて 泣き出したのは
僕だった? きみだった?
ねえ 誰にも同じ一秒なら
少しでも長く スマイル・フォー・ミー

冷えきって 悴んだ指で
どんな約束をしたっけ
酔っ払って細切れの記憶は 嘘だよ
何ひとつ忘れるわけがないよ

勝手なくせに泣き虫だから
仕方なしの僕のちっぽけな優しさだよ

抱きしめて 溺れるんだ
どの夢にも どの嘘にも
ねえ もう少しこうしていたいな
なんて言わないから スマイル・フォー・ミー

酔いにまかせて何もかも投げた
淋しがりなきみの最後のくちびるだね

抱きしめて 溺れるんだ
どの夢にも どの嘘にも
ねえ 誰にも同じ一秒なら
より微笑みの人生を きみに

ねえ 窓の外にはいつか見たブルー
きみを忘れないよ スマイル・フォー・ミー