いまはむかし

最終の電車を待ってた
白い息を吐いて

誰もいない駅で
誰もいない心で

あのトンネルを越えれば
もう過去になると知って

伝えた言葉は
いろんなものが足りない

山道のカーブの数字を
きみはただ数えて

変わる僕を責めた
変わる僕を赦した

振り仰げば満天の
星が一斉に滲んだ

きみに話した
いまはむかし

竹取の翁も
竜宮の城も
鬼が棲む島も
打ち出の小槌も

五色の布の織り手と
働き者の牛飼いと

それを真似た約束も
いまはむかし

あのトンネルを越えれば
すべて過去になると知って

伝えた言葉は
白い輪郭になって

最終の電車を待ってた
遠く警笛が鳴った

誰もいない駅で
誰もいない心で

誰もいない駅で
誰もいない心で