春夏秋冬の向う側

嫌になった僕の代わりに
誰か数をかぞえてくれないか

どれだけの夜を越えて
どれだけの朝を迎えて
どれだけの想いを捨てて
どれだけの思いを捨てられなくて

夢ばかり見る僕の代わりに
誰か話を聞かせてくれないか

巡る春に咲いた花の色を
過ぎる夏に打ち寄せた波の音を
刻む秋に揺れつづける輪郭を
眠る冬に触れるだけの接吻を

誰か 僕にくれないか
誰か 僕をさらってくれないか

傷跡にもならないままの
憎しみの在処に手を当てる
赤いままの傷口をどうか
誰か 笑ってくれないか

きみが 笑ってくれないか
きみが 僕をさらってくれないか

思い出だけが鮮やかな真夜中
目を凝らして 気配を探して

巡る春に射した光の陰に
過ぎる夏に焼け落ちた雲の切れ間に
刻む秋に色づく街の宵闇に
眠る冬に昇る月の裏側に

潜む 面影をせめて
誰か 僕にくれないか

きみが 僕にくれないか
きみが 僕をさらってくれないか