諦めたのかもしれない

こんなふうに偶然逢うのは
もしかしたら、初めてだね

視線を逸らしたのは僕だった
春の海は黙っていた
突然の涙の理由を僕は
なんて言ったのかも忘れた

彼女はお茶を飲もうと笑った
懐かしい声は震えていた

遠い夜明けを思い出して
その青さに目が眩んだ

あの夜に繰り返し鳴った
電話は取らなかった

恋と約束を埋めた砂浜
指の先まで焦がれて
「砂の数よりもキスを」心は
何が欲しくてこんなに痛む?

永遠だと笑って言った
永遠なんて、と笑った

軽く手だけで応えて
その横を通り過ぎた

夜明けの青さを思い出して
その遠さに目が眩んだ

繰り返し鳴った
電話は取らなかった

僕は
諦めたのかもしれない