恋のカタチの
胸に穴が空く
仰向けに倒れて
それは宙に浮んで
僕は目を閉じて
過去に耳を澄ます
こんな時に破る
約束があったはず
恋のカタチの
胸に穴が空く
仰向けに倒れて
それは宙に浮んで
僕は目を閉じて
過去に耳を澄ます
こんな時に破る
約束があったはず
さよならを心に隠して
きみは何でもない顔して
ルーフを叩く雨の音が
古い恋の歌を掻き消す
濡れた髪もかまわず
シートに凭れて口遊む
それは聞き取れないのか
僕が聞きたくないのか
この先の信号を右へ
次のカーブを曲がれば
色も音も無い海に
貼り絵の船だけが浮ぶ
もう何度となく
繰り返したのに
口づけも躊躇いも
初めてみたいに
たった一言で
ほんの一瞬で
沈黙の意味は変わると
知っていたから
願いも約束も
未来もこれきりも
上手く嘘にして
いつもみたいに笑って
すれ違うヘッドライトに
光の粒が弾けて踊る
きみの左目と僕の右目に
光の粒が弾けて踊る
知っていた
その匣の
封印を解いたら
閉じ込めた
夕立と
短い口づけと
そのあとの
青空も
涙も
ごめんね と
動いた唇も
何一つ
受け止められないと
知っていた
同じ言葉でも
違う心だと
知っていた
どの物語でも
ずっと脇役だったと
過去を思う
未来を思う
パラレルの
世界を想う
生を思う
死を思う
三叉路の
果を想う
悪にも
善にも
倦んで
膿んで
仮想の
仮装の
空間の
亡霊の
声も聞ず
姿も見ず
身一つで
身勝手に
季節の端に
昼夜の隅に
いまも潜む
きみを詠う
心と頭で
裏をかき合う
いつまで
言葉に
無を纏わす
何が
本当か
わからない
願いは遠くに
見える山の
あの
夜になりかけの
辺り
いつかの
夜になりかけの
辺り