濡れて行こう

あそこで
傘を渡して

ここで
手を振った

思い出を
何度も辿って
また会えたらな って
灰色の空の下

駅前の
陸橋から

忙しく
吐き出される雑踏に

横顔を
見つけた気がして
足を止めようとした
一秒か二秒前

パタパタと
花時雨

早回しの
人波

あそこで
傘を渡して
きみは
ちょっと困って

僕は大丈夫
濡れて行くから
改札で
手を振った

じゃあまた って
またね って

互いに
何度も振り向いて

赤い傘は
あの頃と同じ

花の雨さ
濡れて行こう