名残り

名前を呼ばれた気がして
振り返れば
いつもと同じ夕焼けが
緩んだ風に霞む

ああ さっきの
うたた寝の間にみた
懐かしい夢のせいだな

もう新しい街にまぎれ
暮らしを変え
揃いの時計も失くして
すっかり別々なのに

まだ 名残りが
消え切らずに立ち昇る
ひとすじの煙のように

心に
あったのかな

いつかの
景色のまま

レールの軋みを数えて
窓の向こう
暮れていく街並みより
映る僕らを見てた

あれは そう
暑い夏の終わりで
何度目かの仲直りのあと

この信号が変わったら って
また次の
信号が変わったら って
繋いだ手も離せず

ああ 名残りは
閉じた瞼の裏にも
握りしめた手のひらにも

閑かに
潜り込んで

心で
赤く爆ぜる

名前を呼ばれた気がして

振り返れば
いつもと同じ夕焼けが
緩んだ風に靡いた