violet fizz

2000円で朝まで飲み放題の
クズみたいな酒の処理機構の

夜には目を覚まして
喚き合う バーカウンター
5、10、15、
中ジャンをハイスピードで

負けて呷って横目で盗み見る
手を叩いて笑う掃き溜めの鶴

グラスには violet fizz
スミレ色の 偽の愛で
rain、rain、外は
ぐっしょりの秋霖の街

酔い足りないのか 泣き足りないのか
タクシーをつかまえて 腕を引っ張って

濡れた髪のまま シートに凭れて
呟いた行き先を いまも憶えてる

口づけた
意味は たぶん無くて

ただ雨が
光って 流れていた

グラスには violet fizz
スミレ色の 偽の愛で
June、July、August
戻れる角はとうに過ぎて

10月生まれは 美人が多い、と
夕方のワイドショーに 少し得意げに

鏡越しのウィンク ベッドに倒れて
出掛けて行く背中を ずっと眺めてた

指切りに
罪は いつも無くて

口づけた
意味は いまも無くて

見下ろす街
名前を そっと呼んで

また夜が
光って 流れていく