ラストシーン

偶然を山ほどつくって 少しでも
きみの傍にいたくて 目が合うと
嬉しくて ほかに何もいらないなんて
思い込んだままで

微笑む顔が見たくて 夜明けまで
嘘を並べたてて 終わりまで
誰よりも きみがずっとすきだったって
僕は言えなかった

きみからの 初めての電話は
少し僕を泣かせた

真夜中の海を見ようって なんとなく
つらそうな声をして 不思議だね
その瞬間 確かな予感がしたんだ
これが最後だって

馬鹿だな きみはそんなに泣いて
何も謝ることなんてないのに
ひとこと さよならって言えばいいのに
僕のことなんかいいのに

やさしいから駄目なんだよって 昔から
損ばかりするんだよって 涙を
指先で 拭ってきみを抱きしめた
いまなら死んでもいい

「今日だけは 送っていかないよ」
僕は普通に言えた?

馬鹿だな きみは何度も振り向いて
何も気にしなくていいのに
ほんと馬鹿だな 元気でなんて笑って
最後まで格好つけて

ほんと馬鹿だな 何も望まないなんて
こんなに 苦しいくせに 

偶然を山ほどつくって 少しでも
きみの傍にいたくて もうそれも
終わりだね 滲む背中を見つめて
いまなら死んでもいい

目を閉じて きみがすきだって呟く
いまなら 死んでもいい