午後七時のバタフライ

お願いだから ただ見とれてる僕を
そんなに笑わないで
鏡越しに 片目を瞑って
振り返って 悪戯なキスした

その華奢な手首を 思いきり掴んだら
きみはどんな顔するだろう
嫌われたくないから 絶対しないけど
これきりだと言われたら 僕はどうするだろう

髪を洗ってあげようか なんて
グラス片手にほろ酔いのきみは
欲しいものだけを 僕から盗っていく

会いたい時にだけ会って
きみの心は何も見せないで
欲しいものだけを 僕から盗っていく

シャワーの中に よそ行きの服で
しゃがみ込んで泣いて
さっきの電話は何だったのって
訊いた僕に 意地悪なキスして

午後七時 きみは蝶になり
夢幻の花畑で蜜を集める

僕といるときが いちばん本当なんだと
いつもきみは言う
そしてその時間が いちばん短いんだと
抱きしめて 悪戯なキスした

だったらずっと僕と 一緒にいようって
言えもしないのに傷ついて
それ見透かして 微笑うんだね
見透かしてくれて 微笑うんだね

呼んだら飛んできて なんて
赤い舌を出して戯けるきみは
出来ることだけを 僕に置いていく

お願いだから ただ頷く僕を
そんなに笑わないで
伸ばしかけて 戻すしかない腕を
引き寄せてきみは 意地悪なキスして

午後七時 何か言いかけた
唇はもう嘘つきの色して

午後七時 きみは蝶になり
次の約束もないまま夜を舞う