きみだったんだよ

出逢えて嬉しかったって
きみはそれだけ言った
解らなくていいから 最後まで聞いて
青春なんて言葉が
もし本当にあるなら
それはきみだったんだよ

夏に投げたコインは
いまも胸の奥で転がる
表は出ないまま いつまでも揺れる
夕暮れのプラットホーム
いつか見たようなオレンジ
満開の桜の下

視線を逸らしたままで
僕はなんだったんだって 毒づく
簡単なものなんだなって 毒づく
違うんだ ただ微笑んで欲しかったんだ

何処へも行かないでって
傍にいてほしいって
言い終わる前の やわらかな拒絶
沈黙に鳴り響いたベル
無意識に動いた手は
きみのてのひらに救われて

静かなきみの眼を見る
もう届かないことが わかる
涙が浮かんでくることが わかる
駆け巡る 笑顔と泣き顔ときみのキス

出逢えて嬉しかったって
きみはそれだけ言った

開いた扉に乗り込む
花びらだけが後を追う
振り向かなくていいから そのままで聞いて
嬉しいとき呼ぶ名前も
悲しいとき呼ぶ名前も
いつもきみだったんだよ

解らなくていいから 最後まで聞いて
青春なんて言葉が
もし本当にあるなら
それはきみだったんだよ