海に降る雪

何も言わないで 雪が
音も無く 海に降るから

このままで埋(うず)もれても
いいじゃないか このまま
埋もれて死んでも
いいじゃないか

冷たいてのひらに触れて
きみは横を向いた
照れたのか 困ったのか
もう 分からないけれど

海へのゆるやかな坂を
並んで下る途中
さよならと 言いかけては
ただ くちびるを噛んだ

越えられないものは ねえ
なんだった? 解らないまま

いまもこうして寄り添う
いいじゃないか それでも
ふたりならそれで
いいじゃないか

伏せられたままの睫毛に
ガラスみたいな涙
手を伸ばせずに 欠片は
零れて 砂に消えた

生まれ変わったらなんて そんな
あてのない約束はよそうよ
ここが行き止まりなら それで
今日までの日々が すべてなんだよ

何も言わないで 雪が
綺麗だよ こんなに

何も言わないで 雪が
音も無く 海に降るから

このままで埋もれても
いいじゃないか このまま
埋もれて死んでも
いいじゃないか

冷たいてのひらに触れて
きみは首を振った
雪になのか 僕になのか
もう 分からないけれど